質問
数年前に「過性脳虚血発作」を起こしました。右手の脱力感、口周囲の感覚障害が起こり、まばたきが1週間止まらない、足がもつれるなどの症状があったため、1週間ほど入院しました。現在は普通に病院勤務をこなしていますが、患者さんの移動介助を行ったりすると、両方の腕の内側が赤くなります。時々足ももつれるので、1年前に脳神経外科を受診し、バイアスピリンを服用しています。半年に1 回の頻度でMRI検査を受けており、今のところ異常は認められていませんが、2年前から両腕のしびれがあり、心配です。
答え
質問内容は、「一過性脳虚血発作」と思われる症状が繰り返し起こっていることと推察いたします。一過性脳虚血発作とは、運動麻痺や言語障害などの神経症状が突然出現して、24時間以内に完全に治まることをいいます。その原因としては2 つのことが考えられます。
まず、1つは頚部から頭蓋内まで脳に栄養を送っている太い血管のどこかが動脈硬化などによって狭くなり、脳の特定の部位で血液が不足して症状が起きる場合で、「頚動脈狭窄症」という病気です。そしてもう1つは、心臓から脳までの問の血管内にできた血の塊(血栓) などが、血管の壁からはがれて脳の血管へ届き、一時的に脳に栄養を送っている血管が詰まって血液が脳へ流れそくせんなくなることで生じる「脳塞栓症」です。
一過性脳虚血発作では、検査しても異常は見られず、症状も完全に回復するため、安易に考えてそのまま放置してしまう人がいますが、一過性脳虚血発作を繰り返すことで、症状の回復しない重症の「脳梗塞」になってしまう危険性があります。そのため、一過性脳虚血発作は脳梗塞の危険信号と考えられており、発作が起こった段階で、内服治療(バイアスピリンなどの抗血小板薬) などによる予防的治療を行うことが重要です。
通常は、一時的な運動麻痔や言語障害、視野・視力障害などが見られ、右手の症状であれば左側の脳血管に病変があると考えられます。ただし、一過性脳虚血発作とよく似た症状は、脊髄の病気でも見られることがあるので注意が必要です。特に、ご質問者の場合、両上肢(両腕) に症状が出ている点が気になります。通常、脳の虚血によって起こる症状であれば、右腕と右脚、または左腕と左脚というように、体の片側に運動麻痔や感覚障害が見られる組み合わせの場合が多いのですが、両腕となると脊髄(頚髄)の病気もチェックする必要があります。
MRIを定期的に受けられていて異常がないとのことですが、振られている部位はどこでしょうか。脳のMRIだけでは内頚動脈の狭窄を見落とす危険性がありますので、一度、頚部超音波検査を受けることをお勧めします。また、神経症状は脳だけでなく、脊髄からも起こることがありますので、脊髄の検査を受けていないのであれば、脊髄(頚髄) のMRI検査も、一度は受けるとよいでしょう。
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