質問
のどに違和感があったため、耳鼻咽喉科と内科を受診し、CTによる検査の結果、「胸部大動脈癌」と診断されました。4cm大とのことで、「4.5cmぐらいになったら手術も考えましょう」と言われました。4ヶ月後に再検査を受けますが、日常生活には何の支障もなく、毎日のウォーキングや週1回のテニスも以前同様に続けています。胸がドキドキしたりすることもありません。今後の生活上の注意点、手術の時機や方法などについて教えてください。
答え
のどの違和感で受診されたそうですが、突然「胸部大動脈瘤」と知らされて、さぞ驚かれたことでしょう。高齢化社会になってきたこと、病院でのCT検査が普及したことにより、胸部や腹部の大動脈痛が発見されるケースが増えています。
お手紙によりますと、癖径(動脈癌の直径)が4cmとのことですので、まだ手術の必要はありません。しかし、胸部大動脈痛の原因は主に血管壁の動脈硬化によるものなので、高血圧や糖尿病、高脂血症を合併したり、極端な肥満がある場合には要注意となります。動脈硬化が進んで動脈痛の進行が早くなる可能性があるからです。そのほかに、「マルファン症候群」という病気が問題になります。これは、大動脈の血管壁が遺伝的にもろいために、動脈癖の進行が早くなつてしまう病気なのですが、検査を受けているのであれば、大抵は医師からその旨の指摘を受けているはずです。
もし、ここで述べたような動脈硬化の危険因子がないとすれば、あまり心配せずに、これまでどおりスポーツを楽しまれて結構です。ただ、動脈癖の進行速度は一定ではありませんので、定期的なチェックが必要になります。少なくとも6ヶ月に1回は、CT検査・MRI検査のいずれかを受けて、癖径を測定しておきましょう。
一般に、胸部大動脈癖は無症状で経過しますが、動脈癌の拡大により癌径が6~7以上になって初めて、声がかすれたり、ものがのみ込みにくくなるという症状が出てきます。さて、手術の話ですが、通常、癌径が5.5cm以上になったら、手術が必要と言われていこぶます。癖の発生部位によって、手術の難易度が違ってきます。痛全体を人工血管に取り替えるのが基本ですが、最近では、網状の金属の筒(ステント) を動脈癖の内側に挿入する「ステントグラフト治療」が注目されています。また、手術方法も、癖の発生部位(心臓に近いか、遠いか) や形状(袋状か棒状か) の違いによって、さまざまな種類に分けられます。
担当の医師が、「癖径が4.5cmになったときに手術を考える」と言われているのは、何かそのあたりの事情があるのかもしれません。いずれにしろ、現状では手術の心配をする必要はないと思います。専門性の強い病気ですので、今後の生活指導を含めて担当医とよくご相談ください。
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