質問
30歳代後半ごろから血圧が高くなり、左顔面に痙撃が見られるようになりました。42歳のときには軽度の「脳出血」を起こしました。数日入院して大事には至りませんでしたが、それ以来、朝だけ降圧薬を服用しています。脳出血と関係があるのかどうかわかりませんが、脳出血後に、左顔面の痙攣が激しくなったように感じます。右足の足首から足先にかけて弱いしびれも残っています。日常生活には差し支えがないので、会社勤めを続けています。このまま様子を見ていて大丈夫でしょうか。
答え
お手紙から推察しますと、左側の「片側顔面痙撃症」と思われます。片側顔面痙撃症は、成人に見られ、男性り女性に多く、左側に起こるのが通例です。症状は、ピクピクといった険の軽い痙撃で発症し、よくなつたり悪なったりしながら、年単位で次第に強くなり、顔面下部にも広がっていきます。
進行すると、痙攣のために目が開けられなくなったり、痙攣が顎の下の皮膚にまで波及したりします。口笛を吹くような動作をすると目が閉じてしまう現象(共同運動) が見られるのが特徴です。「片側顔面痙撃症」の原因は、すべてが解明されているわけではないのですが、多くは顔面神経が脳(脳幹)から出るところで、動脈の圧迫を受けているために起こります。
一部は、脳腫瘍や血管の奇形などによって起こることも知られていますが、極めてまれです。ご質問者は軽い脳出血を起こされたようですが、そのとき、腫瘍などがないことも確認されていると思いますので、おそらく、原因は血管圧迫によるものと思われます。ただ、どの血管が顔面神経を圧迫しているのかという点については、現在のところC Tなどではわからず、特殊なMRI検査で推定できる程度です。
手紙によると、脳出血を機に、症状が悪化したような気がするとのことですが、出血が脳の特殊な部位でない限り、出血そのものは影響しないのが通例です。現在のところは、勤務にも差し支えないようですので、このまま様子を見ていて構わないと思います。
痙攣が著しく煩わしかったり、症状が進行して目が開けられないなど、日常生活で困るようになった段階で、治療を考えればよいでしょう。治療法としては、圧迫している血管を取り除く根治手術があり、この方法で80~90% の方が治っています。手術に躊躇される方には、最近、ボツリヌス毒素製剤を瞼の周りに注射する方法で、一時的ですが症状を抑えることができるようになりました。この方法の場合、注射から3~4か月で元のように戻ってしまうのですが、副作用が少なく、繰り返し治療することができます。顔面痙撃は、以前に比べ治療法の選択肢も広がりました。念のため、また診断確認のためにも一度、神経内科や脳神経外科の*専門医を受診されることをお勧めします。
コメント