質問
夫(68歳) が「アルコール依存症」です。中学時代から酒を飲んでいたそうです。結婚以来、常にアルコールが抜けない状態で、酒癖も悪く、怖くて注意もできないまま、周囲にはひた隠しに隠してこの45年間を過ごしてきました。最近は体調も悪そうで、1日中ごろごろしていますが、それでもお酒は飲んでいます。
息子(40歳) もアルコール依存症で入院中ですが、二人とも根はまじめでよい人です。しかし、夫は最近、物忘れがひどくなってきたうえに怒りっぽくなっている反面、私に頼りきりです。経済的にも行き詰まってきており、どうしたらよいのかわかりません。
答え
「アルコール依存症」は、アルコール摂取によって起こる病気です。最も特徴的なことは「飲酒に対するコントロール喪失」で、これは「1~2杯だけにしょう」「今日からはお酒を飲まない」などと、節酒や断酒を誓っても守れないことです。さらに昼間に飲む(昼酒)、医師に断酒が必要と言われても周囲に隠れて飲む(隠れ酒)、仕事の合間に飲む、など不適切な時間・機会・場所での飲酒が始まり、最終段階では朝から1杯飲み、少し休んでまた昼ごろに飲み、最後には夜寝るまで飲む、という「連続飲酒」が始まります。
医師がアルコール依存症と診断する基準は、
- 飲酒への強い希望
- 飲酒のコントロール障害
- 飲酒中断後の離脱症状(発汗、手のふるえ、幻覚など)
- アルコールに対する耐性の上昇(以前と同じ酒量では酔えなくなる)
- 飲酒以外の楽しみや興味の無視・無関心
- 飲酒した結果が問題になるにもかかわらず飲む
などのうち3項目以上に該当する場合です。この病気からの回復には「断酒」が不可欠です。「節酒」や「問題のない飲酒」ではできません。家族の中にアルコール依存症者がいる場合、多くの家族は「単に飲みすぎているだけ」「家の中でなら我慢しよう」などと、家族の我慢や割り切りでこの病気に対応しようとします。
ご主人にはかなり以前からアルコールの問題があったと思われますが、家族は「飲まないときはいい人だから、私が支えなくては」と我慢してこられたと思います。このように家族が支え手になる場合、多くは飲酒の問題は解決せず、依存症にかかった本人は、家族の後始末や尻ぬぐいに寄りかかるようにして飲み続けます。さらに、〝自分の酒は何も問題ない″ 〝飲んで死ねたら本望だ″などと自分の病気を「否認」するようになるのもこの病気の特徴です。ですから家族に依存症と思われる人がいたら、アルコール依存症の専門病院や地域の保健所に相談することが先決です。
本人だけでなく、家族全員が、専門家のアドバイスを受けて、病気について正しく理解し、適切に対応することが必要なのです。まずは、息子さんが入院している病院のソーシャルワーカーに相談されることをお勧めします。家族としての対応だけでなく、生活面での相談にも応じてくれると思います。
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