質問
20歳になる子供のことです。す。子供は15歳のころから、特に手のひら、背中に異常なほど汗をかくようになりました。漢方薬を続けてのんでいますが、改善は見られません。リラックスしているときも症状が出ます。医師には手術を勧められていますが、手術以外の治療で多汗症を改善することはできないでしょうか。16歳ごろ、一時的に「わきが」が強かったこともありました。
答え
「多汗症」は、体の一部、例えば、手のひらや顔面(特に額)、頭わき部、腋、足の裏など限られた部位に異常に多量の発汗が見られる病態です。緊張や不安によるストレスから発汗異常を来すことはありますが、そのような原因がなくても手のひらなどに異常に大量の発汗があると、流れ出た汗のために、書類などがぬれたり、物がうまくつかめないなど、仕事や日常生活で支障を来してしまうことがあります。症状が中等度の場合は、周囲の人にそのつらさが理解されないため、本人の悩みが深いこともこの疾患の特徴と言えます。
軽症の多汗症の場合には、汗孔を封鎖する効果のある酸化アルミニウムなどの薬剤(市販の制汗剤にも含有されていることが多い) を局所塗布して症状を抑えたり、薬剤を浸透させやすくする「イオン導入法」による治療が効果的な場合もあります。「腋臭症(わきが)」を併発している場合は、腋の汗腺組織を外科的に切除してわきがを抑える方法も効果的です。これらの異常な発汗は、自律神経の1つである交感神経の活動によって発症すると考えられています。
そのため、多汗症の症状が強かったり、手のひらや顔面のように汗腺組織の切除が不可能な部位の場合には、内視鏡を用い、画像で神経を確認しながら、発汗に関連する交感神経の働きを抑える薬剤治療を行う「胸腔鏡下胸部交感神経切除術」が効果的です。
最近では、高い技術を習得した医師が治療に当たるようになり、大きな副作用なしに効果が得られるようになつていますので、近くのペインクリニック科の専門医に相談なさることをお勧めします。この治療法の副作用としては、手術により手のひらや顔面(特に額) や頭部、腋、足の裏などの異常な発汗が軽減される一方、それ以外の部位の発汗が増加する「代償性発汗」と呼ばれる状態になることがあります。
また最近では、「顔面痙撃」などの治療薬として開発されたボツリヌス毒素による治療を行っているところもあります。この治療は、局所に薬剤を注射するという比較的簡便なものです。ただし、この治療法はまだ多汗症に対する確実な治療法として認められているわけではなく、その効果も半年から1年と限られています。いずれにしても、治療を受ける場合は、担当医の説明を十分に聞き、それぞれの治療法の効果や限界、副作用をよく理解した上で受けることが大切です。
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