乳酸菌とは、乳糖やプトウ糖などの糖類を発酵で分解して乳酸を作り出し、エネルギーを獲得しながら生きている菌の総称です。
乳酸菌は乳酸発酵食品に多く含まれています。ヨーグルトやチーズはよく知られていますが、ぬか漬けや味噌などの発酵食品にも含まれています。
乳酸菌の次の3つに大きく分けることができます。
- 動物性乳酸菌(動物由来の牛乳や肉類に生育する)
- 植物性乳酸菌(植物由来の漬物や果汁、穀類などに生育する)
- 腸管系乳酸菌(人や動物の腸内に住む)
ということになります。
また、腸に到達するか、しないかによる分類では、
- 腸内乳酸菌(食べた時に、生きたまま腸に到達する)
- 酪農乳酸菌(食べた時に、生きたまま腸に到達しない)
いう分け方もできます。
東京大学の教授は、乳酸菌をミルク発酵にかかわる「動物性乳酸菌」と植物質の発酵に関わる「植物性乳酸菌」に大きく分類しました。植物質が原料となったほとんどの発酵食品には乳酸菌がかかわっており、それらの発酵食品の味や香りに深く関与しています。それが植物性乳酸菌です。
日本では、日本酒、味噌、しようゆ、各地名産の漬物(たとえば、ば漬け等) などに植物性乳酸菌が存在しています。世界的にみても、すぐき、野沢菜、しキムチ、パン、サワーブレッド、ザウアクラウト、ウイスキー、ワイン等多種多様に及んでいます。
さて、腸に生きたまま届いた乳酸菌は、乳酸を放出し、腸内を弱酸性の環境にします。そして弱アルカリ性の環境を好む悪玉菌が抑制され、腸内に存在する善玉菌を増加させます。その結果、腸内環境が良くなり、腸本来の機能が高まり、便秘や下痢を解消することが期待できるのです。
一方、生きたまま届かなかった乳酸菌(死菌体) は善玉菌のえさになったり、有害物質を吸収して外へ出すという役割があります。ところで、ヨーグルトやチーズの乳酸菌は、発酵した乳に生育している動物性乳酸菌で、乳に含まれる乳糖をエネルギー源としています。
これに対して、植物性乳酸菌は、野菜や米、豆などの植物素材が発酵したものに生育しています。これは、植物に含まれるブドウ糖、果糖、ショ糖など、植物ごとに異なる色々な糖をエネルギー源として生育しています。植物性乳酸菌の特徴は、酸やアルカリ、温度変化に強く、過酷な環境条件でも生き続け、生きたまま腸の奥まで届く点です。つまり、胃腸の中でも弱ることなく、生きたまま腸に届くのです。その結果、乳酸を放出して腸内環境を弱酸性にすることで、善玉菌が増え、便秘解消などの整腸作用が期待できるというわけです。
さらに、植物性乳酸菌は、植物素材が発酵した食品に含まれるため、低脂肪でカロリーが控えめです。また、野菜を発酵させた食品が多いので、整腸作用が期待できる食物繊維を一緒に摂ることができるという利点もあります。
現在のように日本が豊かになる以前(第二次世界大戦以前) では、栄養補給のためには米飯をたくさん食べる必要がありました。
一方、食生活が米に偏りがちだったため、他の栄養を補給する副食(おかず) が重要な役割をはたしていたのです。そのような時代に日本人の腸を支えたのが、植物性乳酸菌です。すなわち、発酵した各種漬物であったり、味噌、しょうゆなどでした。
つまり、つい最近( ヨーグルトや乳酸飲料が増加してくる昭和30年代) まで、日本人の胃腸の中は、多くは植物性乳酸菌が占めていたといえるのです。そして、植物性乳酸菌だけの影響とはいいがたいのですが、肉類や乳製品をあまりとらず、魚類、穀物、野菜などを多く摂っていた昭和30年代以前には、大腸ガン、潰瘍性大腸炎やクローン病等の難治性炎症性腸疾患は、現在に比べて本当に少なかったのです。
つまり、植物性乳酸菌が主体の時代のほうが、結果的には日本人の腸内環境が良かったといえそうです。だからといってヨーグルトやチーズ等の動物性乳酸菌をまったく否定するわけではありませんが、植物性乳酸菌が、日本人の長い歴史にわたって、腸の健康維持に重要な役割を担っていたことは事実なのです。
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