質問
先日、整形外科を受診し、検査の結果、髄液の流れが少し悪いことがわかり、「頸椎後縦靱帯骨化症」と診断されました。点滴とリハビリテーション、薬の服用による治療を3ヶ月続けましたが、あまり効果が得られず、現在も1.起床時に脚が立たず起きるのが困難、2.腕や手の指に痛みやしまたびれがある、3.股の裏が張って歩きにくい、4.体重減少、5.尿の出が悪く排尿回数が増えた、6.左の肩と腕の痛みが続いている、などの症状があります。現在は整骨院で温熱療法も受けています。今後の対処法をお教えください。
答え
後縦靱帯は首の骨(頚椎)の体部(椎体)の背側にあり、7つある首の骨をつないでいます。この靱帯が太くなり(肥厚し)、かつ骨になる(骨化する) 病気です。原因はまだ不明ですが、日本人に多く、厚生労働省の特定疾患調査研究事業の対象となっています。
この病気の症状は次の2つに分けることができます。1 つは神経圧迫の症状で、脊髄が圧迫されると、1.手足のしびれ感(指先や手全体あるいは足先のジンジンした感じなど)、2.手先の不器用さ(ボタンを留めにくい、箸が使いにくいなど)、3.歩行障害(速く歩けない、小走りができない、階段が降りにくいなど)、4.排尿排便障害(排尿回数が増える、尿がすぐに出ない、便秘など)が生じます。
ご質問者の1.2.3.5はこれに相当する可能性があります。また、脊髄から手に分かれていく神経(神経根) が圧迫されると、腕の痛みやしびれ感が生じます。これは6の可能性があります。もう1つは脊椎の靱帯の骨化により生じる症状です。首の動きが悪くなる、胸郭の動きが悪くなって深呼吸がしにくくなるなどの症状です。6の肩の痛みなどはこの可能性もあります。
なお、体重減少はこの病気による直接の症状ではありません。この病気では糖尿病がしばしば合併しますから、それが関係している可能性や、長引く痛みによる精神的落ち込みなどの可能性もあります。
治療ですが、痛みに対しては痛み止め(消炎鎮痛剤)、また首が動きにくいことからくる首や肩の痛みには温熱療法が有効です。しかし、脊髄への圧迫による症状に対しては、今のところ確実に有効な薬物療法はなく、外科治療を考えることになります。
最も問題となるのは手術のタイミングです。階段の下りが不安定である、箸を使った食事がしにくいなどといったレベルになると、手術を考える時機と思います。脊椎の手術というと、大変な手術という印象を持たれている方もあると思います。もちろん、簡単な手術ではありませんが、手術治療を含めてこの病気の研究は日本が最も進んでおり、過度の不安を抱く必要はありません。診断や生活指導は日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医の資格を持つ医師から、また、外科治療は日本脊椎脊髄病学会指定の脊椎脊髄外科指導医から受けるとよいでしょう。
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