質問
昨年夏より、便秘と下痢繰り返しています。いろいろ薬をのんでいますが、すっきりしません。その間、胃と大腸の内視鏡検査を受けて、「萎縮性胃炎」と「過敏性腸症候群」と診断されました。ピロリ菌の検査結果も陽性で、半年以上、ヨーグルトを食べていますが、症状が改善せず、1年間で体重が3キログラム減って、現在42キログラムです。下痢を止めて、もう少し太りたいと思っているのですが、この病気を治すよい薬はないものでしょうか。
答え
「過敏性腸症候群」とは、腹痛や腹部の不快感とこれらの症状に関係した下痢や便秘が繰り返して起こるのに、大腸の内視鏡検査などの精密検査を行っても、症状の原因となる異常が見つからない病気をいいます。原因はよくわかっていませんが、腸の感染症や腸内細菌、ストレスなどが関係していると考えられています。
また、遺伝的な関与もあると報告されています。ピロリ菌の感染や「萎縮性胃炎」とは関係がありません。過敏性腸症候群は有病率の高い一般的な病気です。ただし、過敏性腸症候群と区別のつかない便通異常や腹痛は、内視鏡検査で診断できる「腸結核」などの感染症や「大腸がん」、内視鏡検査では診断できない「糖尿病」や「カルチノイド腫瘍」「甲状腺機能異常」などの内分泌疾患、「乳糖不耐症」のほか、薬の副作用、不適切な食事などでも起こりますので注意が必要です。そのため、慢性的な便通異常と腹痛や腹部不快症状を繰り返す場合には、まず過敏性腸症候群以外の病気がないか、きっちり診断をすることが大切です。
過敏性腸症候群は、腹痛と下痢を中心とした症状の方と、腹痛と便秘を中心とした症状の方に分けることができます。下痢を中心とした症状の場合には、まず食事指導を行います。下痢を起こしやすい食材である牛乳、ヨーグルト、豆類、小麦、たまねぎ、キャベツ、にんにく、オレンジ、蜂蜜、人工甘味料などは避けるようにします。
生活では、禁酒、禁煙、十分な睡眠をとってストレスを少なくすることが勧められます。薬としてはラクトバチルスなどの善玉菌を薬としたもの、腸内の水分を吸着する作用のある親水性のポリアクリル樹脂である高分子重合体薬、腸管のセロトニンの働きを抑えて腹痛や下痢を抑える薬、下痢止めであるロベラミド塩酸塩やタンニン酸アルブミンなどが使用されています。
過敏性腸症候群の治療は、担当の医師とよく相談しながら、長引く場合には少しずつ検査を追加して、隠れた病気がないか調べていくことが大切です。効果のある薬はそれぞれの患者さんで同じではありませんので、最も体に合った薬、治療法を見つけ出していくことも重要になります。
食事や生活にも気をつけていただき、ヨーグルトは下痢の原因となることもありますので、一度食べるのを控えてみられるのがよいだろうと思われます。
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